「夕(ゆふ)さる」と「ユサラビ」

カテゴリ:名詞

「夕方」を表す方言「ユサラビ」と、古い和歌で見たことのある「夕さらば」/「夕されば」という言葉の関係を知りたい。

時間のかかることはしばらくしないでおこうと思ったのに、はまった。調べちゃった。夜更かしして。でも結論が出せずに数日放置しました。なおかつ、強引な結論をご用意いたしました。
これでいいのか、私。…でも掲載しちゃう。

「夕(ゆふ)されば…」

「ゆふされば」で始まる和歌をいくつか見たのは覚えているんだけど…けど、余りメモは取らない私。

古語辞典を引いてみたら「夕(ゆふ)さる」という動詞があった。自動詞、ラ行四段活用。意味は「夕方になる。日暮れになる」。「夕+さる」という複合語らしい。こんな解説が載っていた。

名詞「ゆふ」に移動してくるという意味の「さる」がついて一語化したもの。已然形「ゆふされ」に接続助詞「ば」がついて「ゆふされば」の形で用いられることが多い。

「さる」は、漢字で書くと「去る」。古語辞典には「(季節や時刻を表す語について)来る。なる。」と説明があります。「去る」というと現代語では遠ざかるイメージしかないのにね、ぴんなむぬ(変なの!)

古語辞典に例文として出てきた和歌もご紹介しましょう。

  • 夕されば 門田の稲葉 おとづれて 蘆のまろ屋に 秋風の吹く
    (源経信・百人一首 071)
  • 夕されば 野にも山にも 立つけぶり なげきよりこそ 燃えまさりけれ
    (菅原道真・大鏡)
  • 夕されば 野辺の秋風 身にしみて 鶉鳴くなり 深草の里
    (藤原俊成・千載集 259)
  • 夕されば 小倉の中に 鳴く鹿は 今宵は鳴かず 寝(い)ねにけらしも
    (雄略天皇・万葉集 巻八 1511)

「され」は「さる(去る)」の已然形。接続助詞「「ば」」が動詞の已然形のあとに付く場合は、といった確定条件、つまり「~なので」「~だから」という意味になります。また、恒常条件「~戸決まって」「~ときはいつも」というような意味もあります。
ですので、この「夕されば」は、「夕方なので」とか「夕方になると(いつも)」というような意味合いになるのでしょう。

一方、大伴家持の歌には「夕されば」ではなく「夕さらば」(未然形+「ば」)で始まる歌がありました。

夕さらば 屋戸開け設(ま)けて 吾待たむ 夢に相見(あひ み)に 来むと云ふ人を
(大伴家持・万葉集 巻四 0744)

未然形に接続助詞「ば」が付く場合は、仮定条件を表します。こちらは「夕方になったなら」という意味になるでしょうか。

「夕方になったら、家の戸を開けて僕は待っていよう。夢で会いに来ると言う人を。
ふふふ。大伴家持、ロマンチストです。大好きです。2年ちかく前に本を一冊読んだっきりで、全然詳しくないのですが。…:なんだか私、、予備校の先生みたいだ。

「ユサラビ」の語形

「夕されば」/「夕さらば」の語形が分かったところで、宮古口の「ユサラビ」に戻ります。

古語「夕さる」は動詞ですが、この方言の「ユサラビ」は名詞です。「夕さる」の語幹(活用しても変わらない部分)である「夕(ゆふ)・さ-」と、「ユサ」の部分は共通だと思います。「ゆふさ」から「ゆーさ」という伸ばし音になり、さらに伸ばしの部分が時代とともに省略され「ユサ」となったのでしょう。
「夕さら-」=「ユサラ-」となる活用形は、未然形。となると、「ユサラビ」の最後の「ビ」は、動詞の未然形に接続する助詞か助動詞がくる、と想像できます。

その助詞か助動詞を探すにあたり、まずは「ビ」の元の音を考えてみます。
「ビ[bi]」は、中舌音でなくイ段音ですので、対応関係から、共通語ではエ段音に当たると思われます。そうなると「ベ[be]」が考えられます。それから、バ行音とマ行音が交換しやすい(ex. 寒い:さむい-さぶい)ので「メ[me]」であるという可能性もあります。

その辺りに目星を付けて、辞書で助詞・助動詞を探します。すると、助動詞「ふ」というものが見つかりました。辞書によると「状態の継続を表す」作用があり、「四段動詞の未然形に付く」とのこと。いけそう。

では、「ゆふさら-(未然形)」+助動詞「ふ」で、「夕さらふ」という動詞があると仮定しましょう。
動詞の連体形が、名詞として使われることがあります。たとえば、(動)思う-> (名)思い、(動)笑う-> (名)笑い、というような感じで。
助動詞「ふ」の連体形は、「ふ」。名詞化しても「夕さらふ」>「ユサラフ」。あれ?

では、後ろにさらに接尾語を付けてみよう。
「べ(辺り)」という接尾語があります。辞書によると「~の辺り」「~のころ」という意味です。「夕べ(ユウべ)」の「べ」もこれです。
そこで、「夕さらふ」にもこれを付けて、「夕さらふ辺(ユーサラウベ)」 > ユサラビ、とするのは…ちょっと強引かしら。


…えー、そのうち、もっといい案が思い浮かぶことを、自分で自分に期待します。こりゃ駄目だわ。いつかまた挑戦しようと思います(どなたか真実を知っていたら教えてくださーいっ)。



Posted by Motoca at 2009年02月17日 00:55
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時間帯

カテゴリ:名詞

ほい早速。

とりあえず、先月(2009年1月)の方言勉強会の復習です。ただし、ものすごく局地的な。
今月の勉強会はもう今週末なんですけれど、今頃やります。なんでかよ、まず。

ずっと知りたかったことを習ったんです。
共通語だと、「明け方―朝―昼―夕方―夜(晩)―夜中」となる、一日の時間帯を区分する言葉。
先月、宮古方言での時間帯の表現の仕方を、習いました。


シャーカからユナカがみ(日の出前から夜中まで)

まずは、資料をもとに図を描いてみました。 じゃじゃーんっ!

シャーカ>ストゥムティ>サナカ>ピスマ>ピスマザナカ>ユサラビ>ユナイ>ユナカ
① シャーカ [ʃaːka]
未明。うっすら明るくなる頃。
② ストモティ [s̩tomoti]
夜が明けて明るくなってから(午前9時頃まで)。
③ サナカ [sanaka]
小中(さなか)。朝と正午の中間。
④ ピスマ [pɨsma]
昼間。=正午。
⑤ ピスマ ザナカ [pɨs̩ma zanaka]
昼間小中。正午と夕方との中間。
⑥ ユサラビ [jusarabi]
夕さらへ(「夕方」を表す古語)。夕方。日没前後。
⑦ ユナイ [junai]
夜なへ。日が落ちてからあと。(午後7時~9時頃)
⑧ ヨナカ [jonaka]
夜半。⑧「シャーカ」の前まで。
(その他)
大ざっぱに、明るい時間帯と暗い時間帯を分けて「昼(ピスマ)」「夜(ヨル)」という言い方もします。「スカマ」というのは「仕事」という意味の方言ですが、伊良部の方では「昼間」の意味でも使っていたとか。

この図、なかなか書けんかった。どう表現したらわかりやすくなるだろうかと、形で悩みました。縦長にしようか横長にしようか円形にしようか。いやそもそも私の色彩センスに問題があったり、画像ソフトを使いこなせていなかったりという、根本的な問題もあるのですが。
結局、二年ほど前に掲載して大ヒット(?)しました「アガイタンディ」の一覧表に準じて縦長にしました。見づらい?


それぞれの言葉について述べてみる

へい。それではうんちくタイムを始めます。なるべく短めに。

①の「シャーカ」は「清(さや)か」か「早やか」だと推測していましたが、違うらしいです。咫明(し-あか)。漢字字典によると、咫(し)の字は「わずかに」の意味があるらしい。

②「ストゥムティ」は、は、「朝」を意味する古語「つとめて」として清少納言の「枕草子」に登場しますね。

冬はつとめて。雪の降りたるはいふべきにもあらず、霜のいとしろきも…

1000年ちょっと前ぐらいですかね、「枕草子」の成立年代は。平安時代にも使われていた優雅な言葉でございます、おほほ。
そういえば①「シャーカ」と一緒に「ストゥムティ シャーカ」という言い方があったような。夜明けの朝…?

③「サナカ」。そういえば現代語でも「さなか」って言葉、ありますよね。漢字変換すると「最中」、真っ最中! あはー、そういうことかー(なにがよ)。朝と昼の真ん中。
個人的には「サナカ チョウキ」として聞いたことがある。今で言う「10時のおやつ」(本来、農作業の合間とかの)。私、食べ物が関わるとすぐ覚える。だって、「チョウキだよー」っていわれても意味が分からんかったら、食いっぱぐれるさいがね。ちなみに「チョウキ」は「お茶請け」のことです。

④は、そのまま「昼間」の発音が変わったものでしょう。明るい時間帯の総称としても使われます。

⑤はおもしろいなーと思います。朝と昼の真ん中が「サナカ」で、昼と夜の間は「昼間のサナカ」。2つの言葉がくっつくので、後につく「サナカ(小中)」の「サ」が連濁します。

⑥「ユサラビ」。夕方というか、夜の最初というか。「夕されば」とか「夕さらば」という言葉ではじまる和歌をいくつか見た記憶がありました。これらの和歌に出会うたびに、ぜったいこれは「ゆさらび」だはず!と思っていたのです。時間帯もぴったりだし。ちょっと調べたり考えたりしてみました。はまっちゃったよ。書き始めたらこの記事自体を仕上げられそうもないので、後日記事にします。

⑦「ユナイ」。夕方の「夕(ゆう)」と、夜の「よ」って、元は一緒の言葉なのではなかろうかと思う。「夜なへ」。夜なべではない。
「なへ」はなんだろう。辞書をぱっと見て、文法と意味が通りそうなのは「萎ふ(萎ゆ)」の連体形かな。動詞の連体形は名詞化するので。たとえば「考える」の連体形「考え」が名詞になるように。

⑧「ヨナカ」、夜中。夜の半ばだから「よなか」。共通語と変わらない。でも発音は限りなく「ユナカ」なんだけど。暗い時間の総称「ヨル」もそのまま共通語と一緒ですね。発音は何となく「ユル」ですが。


まとめ?

共通語だと、夜明け・朝・昼・夕方・夜・夜中の6区分。宮古は午前と午後に「サナカ」という言葉があるので二つ多くて8区分です。

えー。テキストからほとんど離れられておりません。なるべく自分の言葉にしようと思ったのになー。とりあえず、図にしたかった。図を書いてみました。今回は文章より図が書きたかったんです。いみーっちゃ(ちっちゃい)図だけどよ。

でも、「ユサラビ」については、はまりました。昨夜夜更かしし、会社で昼休みにもひたすら調べごとをし、まだ納得していない。まとめられるのか? でも気が済むまでやりそう。はまり症なのです、私。

でも、今日はここまで!


参考文献

  • 『宮古方言古諺音義』 p181-185
  • 学研 全訳古語辞典


Posted by Motoca at 2009年02月13日 00:23
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ひとりごと。(今年の目標)

カテゴリ:小ネタ/コラム

今年最初の記事でございます。

はい、いい正月やあー。

なーんつって。旧暦のお正月さえも、あがた んきゃーんかい(遙か昔に)過ぎてしまいましたが。昨日なんかとうとう、じゅーるくにつ(旧1月16日)、後生の正月でした。


去年は、一回しか記事を掲載できませんでした。

言い訳がましいのですが、8割ぐらい書いて結論がまとまらず「作成中」になっている記事が2件ほど(解説編にも1件)、メモからまだ起こしていないものがさらに数件、あるんです。 物事をやり遂げるって、難しい。

去年への反省を込めて、今年の目標を書いておきます。書いて置かんとそのまま怠けそうなので、明文化(!)しておきます。

気負わず、気楽に書く。

結論が出なくても、疑問に思ったことだけでも、聞いて感動したことだけでも、なにか「書く」ようにしよう。

書くとやたら長文になるのも、更新を遅らせている原因ですね。きっと読む方も大変だろうに、すみません。どうやら、「ちゃんとしたこと書かなきゃ」と気負っていた節もあります。年末あたりから、その考え方からだんだん開き直ってきました。
でも、書きかけの長文は、今年の早いうちにアップできるようにします。
書けることから優先するとは思いますが。

こうして自分で文章書きながら思った。そもそもお堅いことが書ける人間じゃないです、私。
ここに堅苦しい文章が多いということは、やっぱり背伸びしていたからだと今は思います。
さー。「たいがい」でいこう。沖縄本島で言うところの「てーげー」ね。

ほんとにほんとに、遅ればせながら、今年もよろしくお願いします。

from Motoca.



Posted by Motoca at 2009年02月11日 11:01
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キ゜ムカギのカギ ―「カギ(美)」について、再々度―

カテゴリ:形容詞

だいず長らくご無沙汰をしてしまいました。
更新を中断すること、なんと一年あまり。んにゃよーい、ごめんなさいね〜。

さて。久しぶりながら、脳みそフル稼働な話をしようと思います。 しつこくも「カギ」について考えてみました。

というのも、このごろ、みゃーくふつメールマガジン「くまから・かまから」に、「キ゜ムカギ」という言葉についての原稿を書いたのですが(くまから・かまから VOL.180, 2008年 9月18日発行)、書く前に言葉の意味を整理していたら、「カギ(美)」という言葉への情熱が再燃してしまったのです。「くまかま」に書いたエピソードには、うすきな ながーながの言葉ウンチクはちょっと興ざめなので、載せませんでした。でも、考えながらいっぱい書いてしまった。情熱はまだ燃え尽きていないので、火の気の残っているうちに、じゃじゃーっと整理してこちらに書いてしまおうと考えた次第でございます。

あっ!書いている本人が脳みそフル稼働のため、ところどころバチバチッとショートしている文章になるかもしれませんが、何卒よろしくおつきあいくださいませ。


まずは「キ゜ムカギ」を分解。

まず、「キ゜ムカギ」は「キ゜ム」+「カギ」の2語からなっています。「キ゜ム」は、「肝(きも)」、「カギ」は「美しい」という意味です。それぞれの語について、さらに詳しく書いてみます。

1. キ゜ム /kizmu/

肝(きも)というと、現在ではほぼ「内臓」のイメージしかありませんが、古くは「心」の意味もあります。古語辞典の説明を見てみましょう。

きも【肝・胆】
  • 肝臓。また、内臓の総称。はらわた。
  • 心。思慮。胆力。気力。

『全訳古語辞典』

ね。あと、現代語にある「肝に銘ずる」とか「度肝を抜かれる」とかの「肝」も、どちらかというと「内臓」よりは「心」の意味ですね。

琉球方言では今もはっきりと「心」意味で使います。
沖縄本島の方言では「チム」という発音になりますが、チムドンドン(どきどきする)、チムガナサ(恋しい<心愛さ)、チムグリサ(かわいそう<心苦しさ)といった言葉がありますね。
宮古方言では、「キモ」と「チム」の中間のような発音です。問題は「キ」に半濁点「゜」をつけて表記している音ですが、もちろん共通語の表記法ではありませんね。共通語にない発音です。ちょっと発音についても書いてみましょうか。

宮古方言のイ段音は、中舌音化します。と、さらりと書いてみる。
何のことかというと、読んで字のごとく、通常のイ段よりも舌が少々奥まるのです。それで、少しウ段によりつつあるような音になります。さらにこの口形だと、息の通り道が[z]の音を発声するときとにたようになってしまうので、その[z]のかすれたような音声も一緒に出てきてしまうという、妙な発音です。
あがいー、やっぱりだめだ。あんなにこんなにと説明しても、どうもこの発音うまく伝えられない気がする。宮古人に発音してもらってください。

強いて言えば、「し」とか「ち」とかいうときの息の抜け方に似ている。なんでかわかる?
この前の方言教室で、新里先生が「共通語であってもこれらの音は、中舌音です」と仰った時には、ぴんとこなかったけど、今ふと思い当たりました。本当に、たった今! 自分でびっくり。私、凄いかも(何のこっちゃ)。

あのね、まず「し」と「ち」を、ローマ字で書いてみてください。ヘボン式ローマ字で。
それぞれ[shi]、[chi]となりますね。ほかのサ行・タ行と違って、[h]の音が入ります。この[h]が綴りに入る音は、舌を奥にして発声します。
たとえば[si](スィ)と[shi](シ)のふたつの音を、舌の位置に気をつけながら発音して比べてみてください。ね、違うでしょ? 
中舌音、というのは、こんな感じで舌が奥まる音なんだとイメージしてください。英語のsh音の方が、日本語よりもさらに舌が奥になるので、こちらが近いかな。

なんだか発音解説の方が長くなってしまいましたが、キ゜ムについてはここまで。さて、次。

2. カギ /kagi/

解釈に悩むのはこの「カギ」の方。2007年1月に書いた「美を表す方言『カギ』について、再び」は、ながーながと書いた割に、すっきり解決できずじまいだったのでした。ですので、3度目の正直、を目指して、再々チャレンジです。

まず、「美を表す方言『カギ』について、再び」に書いたことのおさらいからです。

「カギ」は、仲宗根政善氏の説で「カーギ」は「影」が語源とされています。
この「影」という語は、ものの姿や形のことをいい、古義には「光」という意味もありました。また、「姿・見た目、ようす」という意味で使われる名詞形の「カーギ」も語源は同じであるとのこと。
ここまでが、前回までにわかったことです。

名詞形である「カーギ」の方が、語源の「影」と直接の対応関係にあるではないかと、今は思っています。

そういえば、この語の音についてはまだちゃんと書いたことがなかったと思うので、まずはそれから書いてみます。

宮古方言のイ段音は、共通語のエ段音に対応します。たとえば、フニ<舟(フネ)、アシ<汗(アセ)など。もともとのイ段は追い出されて、中舌音化します。先述の「キ゜」の発音のように。
ということは、「カギ」の「ギ」はもともとはエ段音、「カギ」は共通語の「かげ」と対応することになります。これで「カギ」=「影」の裏付けがとれましたね。

さて、この語の意味を考えるに当たって、名詞形の「カーギ」の使われ方でぱっと頭に浮かんだことを書いてみます。

「カーギヌ ニャーン」

という言葉があります。直訳すると「姿が無い」。でも、透明人間のことではありません。きちんとしていない、格好が悪い、垢抜けていない。そんな人のことをこう言い表します。
カーギは「ある・なし」の概念なのです。「カーギがある」のは、身なりがきちんとしていて、垢抜けた感じのする人。

あー、なんか分かってきたような。「美しい」のは「あるべきものがある」という状態なのでは。
平均に対して上位概念の「美しい」というのではなく、通常の状態が「美しい」、それに足りなければ「カーギヌ ニャーン」という、引き算の概念。
こんな考え方、どうでしょう。


ところで「カギ」の品詞は何ぞや。

「『キ゜ムカギ』とは何ぞや」ということを考える前に、もう一つ「カギ」という言葉について整理したいことがあります。

「カギ」を私はこれまで一貫して形容詞として扱っていたのですが、そのままだとおかしい、ということに気がつきました。
形容詞とするなら、終止形をクアル形にして「かぎかる(かぎかす°)」とするのが通常形ではないかと思うのです。私のたらーん方言経験値では、そんな形があるのかは存じませんが(どなたか習ぁしふぃーさまち!)。
で、「カギ」はその語幹(活用しても変化しない部分)という扱いになるのでは?と思うのです。それで、ちょっと考えてみました。

カギ スマ(美しい島)とか、カギ ピカズ(良い日取り)」という言い方のように、「カギ」の後ろに形容される名詞がくるのが本来の形ではなかろうか。お。いきなり「私がくま・かまの原稿で使った用法は間違いかもしれません」宣言か。
でもね、「キ゜ムカギ」のほかにも、「すなかぎ(品+カギ=上品)」もありますからね。道ばたの看板にもある用例がわざわざ間違った方言だとは思えません。ちょっと、名詞っぽい使われ方をしているのだと思います。

ちょっと逆の考えをしてみます。
形容詞を名詞として使う、ための条件。たとえば、形容詞「長い」が名詞「長さ」となるとき。形容詞「美しい」が「美しさ」となるとき。これは、形容詞語幹+接尾辞「さ」をつけたもの。程度・状態を表す名詞のつくり方です。
「カギ」も、同じ用法で「カギサ」(美しさ)として使われます。

それでね、ここから先は私の、どぅーかってぃ(自分勝手)な思考展開です(つまり妄想)。
形容詞「赤い」が、接尾辞「さ」をつけて名詞「赤さ」となります。「赤さ」の形容詞語幹は「赤」。そのまま、色名の名詞。
名詞形が先か、形容詞形が先か、というのを私は知らないので、もしかしたら間違いかもしれないですが、こういう考え方もありかな、と。
それに、色名だけでなく、「広い」「広さ」に対する、単位「尋(ひろ)」というのもあるので、「カギ」もこうやって、名詞っぽくなってきているのかなあ、と。普段の会話で「カーギ」として使われる言い方を、「カギ」に置き換えると違和感があるので、名詞っぽく、という表現を使っていますが…。


では、「キ゜ムカギ」とは何ぞや。

まず、ひとつ問題。もとの名詞形「カーギ」が「ある」ということを前提とした言葉なら、「カギ」には「そのカーギ(姿・ようす)がある」という意味の含め方ができると思います。
ということは、「キ゜ムカギ」というは「心(のそもそものあり方の)姿がある」>「心ある」ということなのかしら。
「心ある人」って、親切な人のことをいますよね。確かにそれは、「キ゜ムカギ」かもしれない。

でもね、「心ある」は一番近いと思うけれど、やっぱり「キ゜ムカギ」は宮古方言独自の言葉だな、と、個人的には思います。
これだけ意味を遠回りさせてようやく「心ある」という表現と同じように解釈ができるわけですから、迂回ルートを通る間にもっといろいろなエッセンスがしみこんでいるのではないかしら。なあんて勘ぐっております。

それにしても、最初に「カギ」という言葉についての記事を書いたときから、もう2年あまり経ってしまいました。今回でようやく、意味の整理がついた気がしますよ。勉強の成果もあるのかな、と、ちょっとほっとしております。



Posted by Motoca at 2008年09月19日 07:50
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お知らせ

カテゴリ:このblogについて

すみません、長らく記事を書かずにいて。

弁解いたしますとですね、
ひとつ記事を書くのに、ああ、あれも説明しなきゃ、これも説明しなきゃ…と、だんだん書きたい事項が出てきて、その説明の説明を書くためにもうひとつ説明を書かないといけないな、…と、なんだかずるずると「芋づる式」というか「あり地獄」というか、どうにもならない状態に陥っております、現在。

それで、文法の基本事項を、最近になってようやくぽつぽつとまとめ始めました。
基本事項は、「あっがいたんてぃ!【解説編】」に載せることにしています。
実はこのブログ、一年以上前から設置しているのですが、検索エンジンにもインデックス禁止(探さないでください、の指示)をして、TI-DAの更新一覧にも情報を出さないように設定していました。なにせ、自分の説明能力(学力)に自信もありませんでしたし、実際、本格的なことを書こうとしても、まとめられるだけの知識が追いつかず、記事をなかなか増やせませんでした。
それで今まで、隠れ裏ブログのような存在だったわけです。
ここ(メインブログ)には一応、左上にちいさくリンクを置いていたのですが、お気づきになる方は少なかったのではないかと思われます。

だがしかし。このたび、この【解説編】ブログも記事をきちんと書き足して、ちゃんと公開するようにいたしました。ちょっと勇気を出して、自分に無理をしないレベルで書いていこうと思います。

このメインブログに書きたいことを書いても良いな、と思えるまでしばらくは、次々と日本語文法の基本的事項の解説を書き連ねていく所存です。そういうわけで、しばらくは【解説編】がメインになるかもしれません。不覚、といえば不覚なのですが。
でも、芋づる式あり地獄にずっとはまっているよりはいいや! もう何でも、とにかく書いてみることに決めました。
ただし、(ご存じの方も多いと思いますが)私は遅型マイペースの人間ですから、どうぞ気長にみていただければと思います。
今後ともよろしくお願いいたします。

「あっがいたんてぃ!」ライター
Motoca.

【解説編】ブログの更新情報

当分、解説編に新しい記事を掲載した際には、ここに追記していきます。



Posted by Motoca at 2007年08月28日 11:40
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